お嬢、ハッピーバースデー!!
って事で、あげますお嬢誕生日記念。
10年サイトやってて当日あげるの、はじめてかもしれない。
題は、鴉というバンドの歌からいただきました。
ホンコレ、シゲマイやん! とSS着想をいただきましたー
どうぞ~
[2回]
黒髪ストレンジャー
「あれ、君どっかで会うた事ない? 見たことあるわー」
ナンパの常套句に、麻衣子はあきれて言葉が出なかった。
とあるパーティーの会場。急に呼び止められて振り返ったらば、第一声がこれ。
まったく困った男だ。
「どこでやったかなー。ここまで出てきとんのやけど」
無言の相手に、尚も首元を手で示しながら言う男に、麻衣子は言ってやった。
「ええ。会ったことありますわ――佐藤成樹さん」
男の旧姓を呼んでやる。怪訝な表情になる男は、しかし麻衣子の事を思い出さない。
「中学時代の同級生を忘れてナンパなんて、あなたもいい御身分ですこと」
「――中学時代? ホンマに? あれ、もしか……サッカー部の……」
「上條麻衣子です、無理に思いださなくてもよろしくてよ。じゃあね」
踵を返した麻衣子の腕をつかんだその男――プロサッカー選手の中でもで有数の知名度を誇る藤村成樹は慌てたように言った。
「あ、思いだした。うん、思いだした。お嬢やんな、待ってや。頼むわ」
「結構です。離してちょうだい」
「思いだすのに時間かかったんは、ホンマにすまんて。謝るから待ってぇな」
そんな流れで、ゆうに5年ぶりに再会した男の攻勢に負け、麻衣子は男の出場する試合を見にいくはめになった。
連絡先を交換し、デートの約束をとりつけようとする男をかわし続け。
結局、麻衣子の自宅にプレゼントとともに送りつけられたのは、一枚のチケット。
サッカーなんて何年ぶりだろう。ほんの少し、今でも心の端にひっかかっている初恋の相手からのアプローチに、麻衣子は再会したときの状況もあって、なんだか素直になれないでいる。
藤村成樹は客席をいつもより慎重に見まわした。
上條麻衣子と再会した時、すぐに思いだせなかったのはまずかった。
――どうして自分は忘れていたのだろう、あの瞳を。
再会した時も、一瞬で囚われた。
あの深くて黒い瞳に、自分を映したくて、馬鹿をやったりからかったりしていた中学時代の思い出が一気に蘇った。
どうして忘れていられたのだろう。あの瞳を見つけたら最後、独占したくてたまらなくなる自分がいたはずなのに。
サッカーで押しやられていたのか、東京と京都という決別が明らかだったからか。
今となってはわからない、けれど。
こうして再会して、藤村成樹はスタンドを見まわしている。
上條麻衣子の招待券の座席あたりを探せば、彼女が立っていた。
何年ぶりかで、その瞳にはユニフォームを着た自分が映っているはずで。
思わず手を上げていた。
指は三本。
ざわ、と客席どころか、チームメイトまでざわめいた。
――そのサインは、ハットトリック予告。
茫然と自分を見つめる上條麻衣子の姿。
そのことが、自分を高揚させる。
彼女は自分に気があるのか。恋人がいるのか、それともフリーなのか。
そんな事はどうでもよかった。
俺から瞳ぇ逸らされんようにしたる。
あまりにも強い自分の欲求そのままにピッチを荒らしまわることを決め、不快を隠さない敵チームに、シゲは不敵に笑った。
END
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2015/08/29
笛小説
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