ご無沙汰してます。
暑いですね。
シゲマイの夏なんだけどな…
中々更新は進まない感じですいません。
シゲが出てこず、ただ麻衣子が友達と話してるという、お話です。
どうぞ(汗)
[0回]
キスからの距離
「元気ないじゃない、麻衣子。ため息ばっかりついて」
ドーナツショップでコーヒーカップを傾けていた麻衣子は、一緒に来ている友人の質問に答えた。
「間違えたわ、って、つくづく思っておりまして」
「何のことよ」
唐突な麻衣子の言葉についていけない友人が訊く。 「酔っぱらって……付き合ってもいないのに、キスしてしまいまして」
うなだれて麻衣子は言った。
「好きでもなんでもない人?」
「……いちおう、好きな人、ではあるんだけど…」
「ならいいじゃない。好きな人相手なら後悔しないでしょ」
「そういう意味での後悔じゃないのよ。順番に距離をつめて、進むものなんでしょう? 恋愛って。
ちょっとはいい感じだったのに、それから連絡がないのよ」
「麻衣子からは連絡したの?」
「してないわ。気まずくて」
ああもう! と麻衣子はいっそううなだれた。
「彼に引かれたかしら。私の気持ちが重かったのかも。それとも、酔っぱらってキスなんて、軽いと思われたのかしら」
しばらく無言で落ち込み、友人を見上げると、友人は複雑な顔をしていた。
「何よ、その笑いたいの我慢してるみたいな顔」
「だって、ねぇ」
友人は話を変える。
「とにかくさ、思い出してみてよ。キスした時の彼。嫌そうだったの? それとも積極的に応えてくれた?」
「積極的に応える、って?」
「わかんない? 麻衣子、キスの経験はどれくらい?」
「……その時、初めて」
「えっ本当に?」
「本当よ」
しぶしぶ頷く麻衣子に、目を見開いた友人だったが、気を取り直した風に続けた。
「キスに応えるっていうのは、あっちからもキスし返してくれる、みたいな……唇を動かしたり、半開きにしてずらして触れ合わせたり、ついばんだりして」
「そ、そうなの?」
思わず赤くなって麻衣子は答えた。
「されてないわ。ただその後、抱きしめられて」
「そうなんだ。じゃあ、上手くいきそうなもんだけどねぇ」
「もう、どうしようかしら。ひょっとしたら私、恋愛対象外だったのかも」
「どうするの? 相手からの連絡待ちする?」
「……どうしよう? こういう時ってどうしたら良いの? 相手がお付き合いを申し込んでくるように色々頑張るのがルールだと思ってたから、こんな事になっちゃって、もうわからないわ」
「恋愛にルールも公式も無いと思うけどなあ」
友人は続ける。
「もしそんなものあったとしても、守れやしないしさ。自分ができるようにしか、できないのよ結局。
あたしだって、しまった、こうしておけば良かったって、後悔の連続だわよ。でもそうやって経験値積んでくしかないよ、恋愛は。
だから麻衣子も頑張って。
相手が麻衣子のこと好きなら、キスされて嫌な気はしてないと思うよ」
「……どうかな。連絡ないのはどうしてなのかしら」
「まあ、想像はできるけど。ちょっといい感じだった2人が、お酒の勢いでいきなりベッドインしちゃったようなもんでしょう。相手だって気まずいよね、そりゃ」
「そんなあからさまに言わなくても」
麻衣子は軽く抗議してから訊いた。
「ねぇ、どうしたらいいと思う? もしあなたならどうするの」
「私のしたいようにするわね。連絡するし、会いに行くし。『付き合って』って、こっちから言う」
「振られたらどうするのよ」
「失恋初めてじゃないしねー、あきらめるか、諦められないなら再度アタックじゃない?」
「無理、私、そんなのとてもできない」頭をかかえる麻衣子に、友人はウインクして言った。
「ね? 他人の話なんかあてにならないでしょう?」
自力であがくのよファイトー、と友人は話を締めた。
麻衣子はあきらめのつかないまま、友人を見つめた。自分の経験の無さが悔やまれる。待つ以外に、現実的にできそうな手段が思いつかないのだ。
なんだか尚も笑うのを堪えているような表情の友人に、麻衣子は聞いた。
「ねえ、なんでそんなニヤニヤしてるのよ」
「え、まあねぇ、麻衣子も酔うとキスしちゃうようなキャラなのね、意外だわーって思って。酔うと積極的なの?」
友人が言う。
「違うわよ、酔ったって普段は、全然そんなじゃないわ。なんで彼にかぎってそんな事しちゃったんだろう。自分でも意味不明なのよ」
麻衣子が落ち込んでいるのは、そういう意味も含んでいた。
自分で自分がわからない、といったたぐい。
「恋愛ってそーゆーモンじゃない? 知らない自分がいたり、びっくりするような事しちゃったり。うれしい発見ばかりじゃないけどさ、それでも年が経って後から思い出せば、懐かしいもんよ、失敗してもさ。どんどん行きなさいな」
「もー、一体どれだけ経験あるのよ貴女」
「え? あたし?」
友人は指を折って数え始めた。
「記憶にある小学校からなら、好きになった人は20人ぐらい、付き合ったのは8人ぐらいかなー。経験したのは5人。あ、これ内緒ね? 普段少な目に申告してるからさ」
目を白黒させて、麻衣子は頷いた。
「あたしは、告白されたら感じ良い人なら、そんなに好きじゃなくても、とりあえず付き合ったりしたからね。好きな人とじゃなきゃ付き合わないって主義だったら、私だって2人としか付き合ってなかったと思う。
それがさー、面白いことに、好きな人とほど、上手くいかなかったりしてさ。両思いでも、付き合って上手くいくかってわからないもんで。中々一筋縄ではいかないわけよ」
「そ、そうなんだ……」
「そうよー、だから付き合ってからが本番。麻衣子も早く付き合っちゃいなよ」「私から付き合って、って言うってこと? 無理よそんなの」
「キスできたんならできると思うけどなー。もっとたくさん、キスしたくないの? 付き合ってればいつでもできるよ」
「やめてよもう」
麻衣子は恥ずかしさに顔を隠した。
彼にキスしたかった。彼に会っているとそれは、度々よぎる思いで。酔っ払っていると、我慢ができなくなるのだろうか。
「麻衣子から見て、脈が無いわけでも、ないんでしょ? 麻衣子がいい感じって思ってるなら、相手だってそう思ってそうだけどねー。それでも告白待ちする?」
麻衣子は言葉につまった。
彼から告白めいた事を言われたことはなくても、彼からの好意は感じていた。
だからって、自分からそう簡単に、付き合ってと言えるものではない。
「告白する度胸なんて、ないわ」
麻衣子は正直な気持ちを言う。
「勿体ないなぁ」
と身体を反らせた彼女は、
「早く麻衣子と、色気のある話で盛り上がりたいんだけどなー、はじめての付き合いだと悩み事いっぱい出てくるのよー」
と、茶化しているのか脅しているのかわからない事を言って、また麻衣子をたじたじにするのだった。
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2014/08/03
笛小説
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