シゲマイのSSです。
アンダー代表の面々がちょっぴり出演中。
[0回]
中学時代の同級生だった佐藤成樹と上條麻衣子の二人。
高校進学のため、京都と東京に離れて、遠距離恋愛も丸3年になろうとしている頃。
ある日、U-19の合宿が東京で行われた。
もちろん、藤村成樹も出場したのだが、その時言われたのだ。
『そんなに自慢すんなら、その彼女、一度紹介しろよ』
売り言葉に買い言葉で、U-19の代表メンバーに彼女を紹介することになった藤村成樹。
さて、そこで起きた出来事とは?
LESSON合宿練習の解散後、用事があるメンバー以外は最寄駅でたむろしていた。
「どうしたんその髪型!」
約束の待ち合わせ場所で、上條麻衣子を見つけたシゲがあげた、駅舎内に響き渡る声に、上條麻衣子が顔をひきつらせた。
「なんでそんなんしたん? パーマかけたん?」
「いいえ、巻いただけですけど……いけなかったかしら」
シゲのそばまで来た彼女は、ゆるく巻かれたその黒髪に触れる。彼女的には、普段はしないお洒落をしたつもりだったのだ。ふんわりとしたスカートに、ゆるく巻いた髪。流行のカチューシャを合わせたりもして。何日も考えたコーディネートだったのに。
「お嬢はストレートの黒髪がすっごく綺麗やって、皆にもそう話しとったんに」
彼女は、ぴき、と青筋が立つ音が聞こえてきそうな表情。
「……ごめんなさいね、ご期待に添えなくて」
彼女の不機嫌に気づかぬシゲは、さらに続けた。
「皆に紹介するん楽しみにしとったんに……お嬢の髪」
髪以外に、私に価値ないわけ? 麻衣子の堪忍袋の緒が切れた。
ぱっしーん!
響き渡る平手打ちの音。上條麻衣子の右が見事な軌跡でさく裂した。
「アンタなんか大っっ嫌いですわ!」
そう言い残すと、彼女は肩を怒らせながら人ごみに紛れるように歩いて行った。
シゲはアンダー代表であるチームメイトの視線(哀れみが主)を背中に感じながら、地面に崩れるようにしゃがみ込んだ。
「おい、大丈夫か。気落ちすんなよそんな」
「そーそー。喧嘩したなら仲直りすりゃいーじゃん」
慰めの声が掛かる中で、シゲが額を押さえて言った。
「っかわいい……可愛すぎる……」
あぜんとする一堂に目もくれず、シゲは天を仰いでなにやら呟いている。
その様子に若干ひいていた皆の中から、見かねた水野が声をかけた。
「おい、シゲ。いいかげん戻ってこい、ほら、通行人から見られてるからお前」
「おお、思わず我を忘れてもうたわ」
立ち上がるシゲに、「ご愁傷さま」と最近彼女と別れてフリーになったらしい藤沢が肩をたたく。
「藤村さー、確かにかわいい子だったけど、大嫌いって言われて、可愛すぎるはないだろ。 お前マゾ?」
と、若菜は説教するように腕組みをした。
「せやかて、怒った理由ぐらいはわかるで俺。髪巻くの頑張ったんに、俺がダメ出ししたからショックやったんやろうな。ショックやったなんて、大好きて言うとるようなもんやんか」
「ま、一理ある」と鳴海。
「そー言われてみれば…」と言ったのはたっきーだ。
「……違うだろ」と遠慮がちに入った水野は苦い顔だ。
「どこが?」とシゲが聞く。
「読みが甘いよ」
姫さんとシゲには呼ばれている椎名が言った。
「たしかに彼女はお前が好きで、だからこそショックだったってのは確かだろうさ。けど、彼女が出した信号の意味はちがうぜ。お前を好きだって言いたくて、『嫌いだ』って言ったんじゃないんだから」
「じゃあ、何を言いたかったっていうんや? ホンマに嫌いやってことやあらへんやろ?」
「彼女がどうしてそのセリフいうことになったのか、考えてみろよ。まず彼氏の友達に紹介される、ってんで彼女は緊張してただろ」
シゲが頷くのを確認してから、椎名は続けた。
「久しぶりに会うし、俺らにも会うしで、彼女はおしゃれにも髪型にも気合を入れていた、と。それなのに開口一番台無しにしたんだもんな。そのデリカシーの無さでよく遠距離で続くよね」
「つまり?」
「正しい答えは、ちゃんと俺らに紹介して、『ゴメン、普段の髪型が好きだったから驚いたんだ、その髪型も似合う』って謝らないと」
「ふあー、頭ええなぁ姫さん」
「ほんと、すげえなお前。女より可愛い顔してるのにな」
「……喧嘩売ってんなら、買うよ? お前ら」
険呑な雰囲気の中、渋沢が言った。
「それより藤村、彼女を追わなくていいのか?」
「あっ!」
おおきにキャプテンと言い残し、走りだしたシゲと、シゲの背中を見送ったU-19代表メンバー一同の中で、『一番女心を分かっているのは渋沢キャプテン』と決定された瞬間だった。
~END~
蛇足
恋のレッスン。なにげなく上級者なのが渋沢さんです。
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2013/12/17
笛小説
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