再UP2。椎名とナオキ君が出てます。
[0回]
日常と退屈と椎名の日常はおおむね退屈だ。
まずはじめに、学校の授業。どうして分かりきったことをこうもネチネチと説明する必要があるのか。こんな授業なら、教師の解説を受けない方が理解しやすいかもね、と思うような授業にかぎってしつこく当てられたりする。まったく、嫌気すら差す。
体育なんかの実技の授業も、別に苦労なくトップを取れる。退屈だ。達成感というのは、軽く手に入るものでは得られない。形式張った授業では意外性もない。面白くない。
日常だって、別段変わることがなく過ぎてゆく。入っているサッカー部も、学校自体が進学校とあっては遊びの延長のようなものだ。プロを目指している椎名には勿論、物足りない。
中でも特に退屈だったのは、椎名が今度転校することになった飛葉中という学校に、サッカー部が無いことだった。
……そして、転校から半年後。
椎名はため息をついていた。
椅子に座っている椎名の目の前には、開かれた教科書を前に、すっかり頭を抱えている男子が約一名。
彼は、椎名達がこうしてテスト前に教室で勉強会を始めるきっかけになった、サッカー部随一の問題児だった。
「なんでわかんないんだよ、こんな問題。ナオキ頭悪すぎない?」
椎名は井上直樹の頭をぽんぽんとはたいた。
初歩的な数学の問題だ。椎名が解き方を教えてやったら、ナオキの隣に座っている畑兄弟だってちゃんと答えが出せた。それを、もう何度も何度も何度も説明しているのに、解けもせず唸るばかりというのは、どういう訳だ、こいつは。
「ちゃんと脳ミソ入ってんの? この頭」
「なっんや、お前やって、頭良いくせに、俺に分かるように説明できへんやんか!」
逆ギレしてきたナオキに、愛想なく椎名は返す。
「そんなこと言っていいの? もう教えるの止めようか?」
「うっわ、スマン、すんません、お願いしますーもう追試は嫌なんやぁ」
半泣きで拝み倒されて、椎名はため息をつく。ナオキは元から勉強嫌いのうえ、要領も悪い。マサキなんかはその点、さっぱり手がかからなくてこの場にはいないのだが、いたらコツでも教えてやって欲しかった。
飛葉中サッカー部は部員数がギリギリだ。コイツが追試になれば、サッカー部の活動に支障が出る。
「仕方ないな。あのね、この問題はさぁ」
椎名はしぶしぶ、ナオキのノートにシャープペンを滑らせ始めた。
椎名の日常は、おおむね退屈だった。そう、サッカー部を立ち上げ、いま目の前にいる彼らをチームメイトにするまでは。
元々ガラの良くない奴らばかりだから、部を作る時に揉めたように、騒ぎを起こすことも多い。サッカー部は正直いって、教師に睨まれている。だから椎名は退屈することがない。
「ナオキ、このXの値を出す為にはね……」
椎名はまた、何度目かの説明を始めた。
(あー面倒。だけど、まぁ、しょうがないね)
椎名は、退屈が嫌いだ。退屈しのぎができると思えば、こんなことも苦にならない。
そんな椎名の行動は、後日『口ではキツイこと言うけど、本当は面倒見が良い』と学内の女子の間で噂になり、椎名の評判は更に上がった。
その的外れな噂については、椎名ではなく面倒を見られた井上直樹がなぜか過剰に反応し、噂をする女生徒に睨みをきかせては、更に自身の評判を下げ、なんとか無事に部員全員が追試を免れたサッカー部内で、その話題は、しばらく笑いの種になったとか。
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2013/12/16
笛小説
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