日本列島北部住まいなので桜が今頃咲いてるんですが、
ちょっと先取りの初夏のお話でどうそ。
鳴海×知佳ちゃんに見せかけて、鳴海が可哀想になるシゲマイです。
[0回]
国の名を背負って世界を相手に戦っている彼らも、世間一般で言う「おとしごろ」であることにはかわりない。
だから舞台裏では、普通の高校生みたいに、こんな会話があったりもする。
オフ・ザ・トラック 「うるせーほっとけ。第一お前の方はどうなんだよ、藤村」
代表メンバーにはよく知られている年上の彼女のことで、皆にひとしきりからかわれた鳴海は、ロッカーを勢いよく閉めると、隣の金髪を相手に反撃を試みた。
「お、よくぞ聞いてくれました」
金髪男はにやっと笑い、ウインクまで飛ばして、鳴海を辟易させた。
全国選抜メンバーは、基本的には、異性にもてる。もちろんルックスによって差はあるものの、サッカー雑誌で特集され、また、学校でも特別扱いされ、表彰され、とくれば、身近なアイドルを求める女生徒がほっておかない。
中でも藤村成樹とくれば、派手な金髪と確かなプレー、抜け目のないファンサービスが相まって、選抜メンバーの中でダントツの人気を誇っている。
その藤村に、大事に大事にしている彼女がいる「らしい」、しかも遠距離「らしい」、という噂は誰もが知っていたのだが、口が軽く思えても核心はなかなか話さない男で、誰が振ってもはぐらかされてばかりなのだった。
そんな藤村が『よくぞ聞いてくれました』とは、珍しい。
何かあったのだろうかと、鳴海以外のメンバーも興味津々といった顔で藤村の方を伺っている。
「昨日、デートしてきたんやでー、色々めかし込んできてくれて、むっちゃ可愛ぇんや」
「へえ、美人?」
「そらもう。お前になんか、そうそう見せられんわ、危のうて」
「彼女持ちなのに他人の女に噛みつくかっての! で、どうだったんだ、デートは」
「最高やったでぇ。久々のデートやから、ちょっと位べたべたしても何も言われんし、しかも最近暑いから薄着やしー」
わざとらしく語尾を伸ばす藤村に、人前じゃ間違ってもべたべたさせてくれない自分の彼女を思い出し、鳴海は軽く落ち込んだ。
相づちを打つ気力を無くした鳴海を差し置いて、藤村茂樹は滔々とのろけ続ける。
「で、俺、もうすぐ誕生日なんやけど、その頃に会いに来るんは多分難しい言ぅて、前倒しでプレゼントねだってみてん。まあ、ホンマ、駄目元やってんけど。まだ用意してないって言いよるから、別のモンもろた」
藤村は言葉を切って、思い出し笑いをするように、にやっとにやけた。
背後で、わざとらしく空咳をしているのは、声質からして水野である。
「女の子って、柔ぁらかいんやなあ……なあ、鳴海」
「俺に同意を求めるな!!!」
うっとりと遠い目をしたシゲにつっこみを返し、鳴海はそそくさと控え室を出た。
……なんだか、やけに虚しい。
夏空を見上げながら鳴海が呟いたセリフである。他人ののろけ話を黙って聞けるのは、そいつ以上に幸せな人間だけじゃないだろうか。
社会人で年上の彼女、しかも、鳴海の思惑になかなか乗ってくれない、鳴海より上手の彼女を持つ鳴海が、思う様いちゃいちゃすることのできる機会は、本当にたまにしかない。彼女の仕事は休みが不定期で、しょっちゅう会うことだってできないのだ。
せめて声が聞きたいと携帯を取り出し、彼女、今日はまだ仕事中だと思い出してしまって、涙をのんで諦めた鳴海であった。
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シゲが貰ったのは「人前でぎゅー」と「お嬢からのちゅー」です。そういうことにしておいてください。
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2008/04/20
笛小説
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