忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2026/02/17

謎解きはディナーの後で 8

更新遅くなってすみません~

一話没にして書きなおしたりしてました。

これも、なんかしっくりこないんですが、うーん、現状これが限界です。



それでは8話どうぞ。

この後、後日譚一話があるかな? ないかな? って感じです。




 

拍手[0回]



これほどまでに、煙草を吸いたいと思ったことはなかったと、シゲは考えた。
手持ちぶさたなのに緊張があって、落ち着かない。
しかし煙草を吸わない家主の部屋で黙って吸うのは、マナー違反というものだろう。
上條麻衣子のアパートで、シゲは、だからじっと面白くもないテレビを見ていた。
背後に、夕食の支度をしている上條麻衣子の気配を強く意識しながら。


    謎解きはディナーの後で 8


「焼き加減はどうするの?」
キッチンからの声に、「お任せするで」と返したシゲは、以前と変わりない上條麻衣子の態度に、内心びくびくしていた。
今日、彼女と待ち合わせた後すぐ、入った喫茶店で、聞かれたことと言えば、誰がキスマークを付けたかどうか、だけだった。
俺です、ごめん、と言ったシゲに、そうなの、と流すような返事をされて、責められる覚悟だったのが出鼻をくじかれた。
なぜだかそのまま、夕飯の食材を買い出しに行き、お詫びに良いお肉奢ってよね、と言われるがままステーキとワインを購入した。
現在、肉の焼ける音と匂いが届いてくる状況で。
シゲは頭を掻いた。シゲを部屋に上げたからには、警戒心が増したというわけではない。
彼女は全く怒っていないのだろうか。胸に跡を残されて、何とも思っていないのか?
シゲの気持ちに疎いことからして、男性経験はさほどないだろうと思っていたが、キスマークなんて気にしないほど経験豊富なんだろうか?
それとも、胸に跡を残されたのも気にならないぐらい、大ざっぱなのか。欲望のしるしである事を、知らないのか。
答えの出ない推測を、延々とシゲはしていた。
はっきりしているのは、今までの、ただ夕飯を一緒に食べる間柄、ではもういられない、という事。
シゲは彼女に噛みつき、告白もした。
既に一歩を踏み出しているのだし、彼女もそれに、何らかの答えを返さなければいけないはずだった。


頼んだワインのコルク抜きに手こずっている藤村成樹の前に、焼けたステーキの皿を並べて、麻衣子はエプロンを外した。
「っと、やっと空いたで。注げばいいんか?」
「お願い」
麻衣子も自分のステーキ皿をテーブルに置いて座った。
テーブル上にはチーズと生ハム、エビのマリネ。ステーキとライスと、付け合わせの野菜、スープが乗っている。
ワイングラスはなくて、普通のグラスに赤い液体が注がれた。
乾杯をして、食べ始める。いくらかも進まないうちに、シゲが口火を切った。
「……ええの? お嬢。今日も部屋、お邪魔しとるけど。俺がした事、怒ってないん?」
彼の表情の中に、戸惑いを見出しつつ、麻衣子は言った。
「その話は、お詫びの品を頂いた後で、にしましょうよ」
麻衣子は食べかけのステーキを示しながら言った。
「お詫び――これだけでええの? ってか、なんでステーキ?」
「一人暮らしだと、さすがに、食べないんですもの、ステーキなんて。しかも、一番良いお肉」
麻衣子はナイフを入れ、その柔らかさに顔をほころばせた。さしの細かく入った良いお肉なら、麻衣子が焼いても十分柔らかいのだった。
「スーパーで買わんと、外に食べに行っても良かったんに」
「だってお店で食べる半額以下で食べられるのよ、買って焼けば。美味しく焼けてない?」
「いんや、旨いと思うけど……ステーキ食べたいんやったら、どんな店でも奢ったったのに」
「だってワインもあるじゃない? お酒、外ではあまり飲むなってあなたが言うから、家で沢山飲めばいいのよね」
彼は手を止めて、しばし麻衣子の顔を見てから言った。
「お嬢、それ、俺に言ぅてどういう意味になるか、わかっとる?」
「……どうかしら?」
麻衣子は首をかしげて見せた。
あんなぁお嬢、と彼が言う。
「俺の告白、ちゃんと聞いてた?」
「聞いてましたわよ」
「ホンマに? 忘れとったんちゃうの?」
「忘れてませんわ」
「なぁ、せやったら、返事はどうなん?」
ちらちらと視線を投げながら、彼が聞く。
「せっかちなんだから。後にしましょうよ、せっかく食べてるんですから」
「せやかて、気になってしゃーないわ」
皿をつつきながら彼が言った。
「……だって、今、白状させるのも、気がひけるんですもの」
「何を?」
「寝ている私に何をしたのかよ。詳しく聞かせてもらいますからね、全部。話は、それからよ」
額を押さえた藤村成樹。
「ほらね? 食事中にする話じゃないでしょう?」
麻衣子は軽く笑った。

そう、ただのご飯友達だった頃でも。彼が男の気配を纏わせていることには気付いていた。
もう子供じゃない。彼の放つ、女の防衛本能にひっかかる危険な気配を、恐れながらも、惹かれていたように思う。
思えば、ずいぶん前から、こうなる前から、答えは決まっていたのだ。
けれど、答えを出すタイミングは。
いつもの夕飯とは違う、特別なディナーの後で。
 
PR

2014/02/13 笛小説 Trackback() Comment(0)

COMMENT

COMMENT FORM

NAME
MAIL
WEB
TITLE
COMMENT
PASSWORD

TRACKBACK

TRACKBACK URL :
プロフィール
 
HN:
草(sou)
性別:
非公開
 
 
カテゴリー
 
 
 
最新記事
 
(02/16)
(02/14)
(02/12)
(10/01)
(04/14)
 
 
RSS
 
 
 
リンク
 
 
 
P R