やった!!
雪が消えてきた!!
シゲマイSSどうぞ~
[0回]
春が来たのよ。だから。
渡り鳥は、北へ帰るの。
少女と鳥と中学卒業も間際になった、お天気のいい、帰り道。
鳥の声に呼ばれた気がして、麻衣子は空を見上げた。
青い空に、白い鳥の群れ。
白鳥が北へ帰るのだ。
そう、渡り鳥。
ひとつところに留まりはしない。
時が来れば、去ってゆく。
思えば、彼と鳥は似ていた。
気の向くまま、麻衣子のそばに来て。
ふらりと居なくなって。
しばらく来ないと思っていれば、
怪我をして世話をせがんできて、
撫でてもらいたがったりして。
「ふうん、そないに思ぅてたん? 似とるか?」
かたわらに立つ、佐藤が言った。
「だって、縛れないでしょう?」
麻衣子は答えた。
いつだって、つかみどころが無くて。
自由なのが、彼らしくて。
籠の鳥、なんて死んでもならなそうで。
飛べない自分はただ憧れる。空を舞う彼。
たまに、羽を休めにやってくる彼を、待っている。
そして、元気に飛び立つ姿を見送り、また次を待つのだ。
けれども。
「渡り鳥よね、あなたは。居るのは今だけで。時期が来たら、どこかに帰って行くんだわ」
彼から、麻衣子はまだ聞かされていなかったけれど。
ずっと前から、噂になっていたから、知っていた。
「あなたは京都に帰るんでしょう?」
東京から、彼の実家である、京都へ行くと。サッカーの有名校へ進学すると。
彼女には遠く、友人では近く、何かと問われれば首をかしげる、曖昧な関係だけど、聞いてもいいだろう。
「もう、ここには来ない?」
麻衣子は彼を振り向いて言った。
来ない、と答えが返るのも、覚悟していた。
去る彼を、追いかけるすべを麻衣子は持たない。麻衣子は飛べないから。
見上げる彼は、考える様な顔を見せた後、
「来たい、とは思ぅてる」
と、ふてくされるように言った。
「俺、鳥とちゃうし。攫いに来るかもしれんとは、思わんの? お嬢」
麻衣子は眉をひそめた。
「攫うって、何を?」
「今は行く。今は、な。まだガキやから。でも、いつまでもそうやないし、今度来る時は俺、白鳥ほど無害とちゃうで」
彼が麻衣子の目を見る。
「俺、決めたんや。腹も括った。だから京都に行くんやけど、お嬢をあきらめる気ぃはないで」
前半はサッカーのことを言っているのだと見当がついたが、後半はよくわからなかった。
「待ってていいの? ここに来る?」
「待てるんなら、待ってて。そないに時間かからんから」
彼は、あたりを見回したあと、大胆にも麻衣子を両手で抱き寄せた。
そこまで彼と接触するのは初めてで、麻衣子は身を硬直させ、棒立ちのまま彼の言葉を聞いた。
「人さらいになって、迎えに来るから。待っててや」
頷く前に、彼の唇が迫ってきたので、麻衣子はあわてて目を閉じた。
彼は生身の男の人なのだと、はじめて知ったような気がしていた。
おとぎ話風。餌付けしてた白鳥が男に変身、みたいなイメージ。
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2014/03/06
笛小説
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