更新お待たせしました。(ずいぶん間が空きましたね、すいません)
ミズユキのSSです。
本格ミズユキ、超ひさしぶりだ……
ミズユキはどっちも、相手に対して押しが強くないので、
難しいです。
でも空気は夫婦なんだよね。
Keep still ・・・じっとしている、動かないでいる
[0回]
お互いが、一番近くにいる異性だという自覚はある、のだけれど。
Keep still
「悪い、先に行っててもらえるか? すぐ追いつく」
と、水野は部室前で待っていた有希に切りだした。
早めに練習が終わる水曜日。
これから二人で、部の消耗品を買い出しに行く予定だったのだが。
「いいよ、あたし買っておくから」
「一人で荷物持つの大変だろ。かさばるし。すぐ終わるから」
「……そう」
有希は答えて、頷いた。
買い出しの店も順路も決まっているのだから、合流は心配ないだろう。
「わかった。先に行っとくね」
「悪いな」
言い残して、水野は校舎の方へ向かった。
十中八九、告白のために呼び出されたんだろうな、とその背を見つめて有希は考えた。
それはしょっちゅうあることで。同学年の2年生からはもとより、1年3年からも、同じくらいのアプローチを受けていた。
ラブレターはまともに取り合わない、呼び出しにも応じない有希と違って、水野はたいがいは、無視せず面と向かって断っている。
告白される回数を考えれば、けっこうな労力だ。
ふう、と軽く息をつき、ショルダーバックを掛け直して、有希も校門へと足を踏み出す。
すぐに追いつく、って言ったって、ねぇ。告白するほど彼に片思いしている女の子が、あっさり、納得してくれるものなのか。
しつこい男に迷惑した過去のある有希には、どうも疑問だった。
有希が1件目の買い物を終えないうちに、水野は追いついてきて、買い出しは順調に進んだ。
二人とも両手に買い物袋を提げた姿での帰り道に、有希は聞いてみた。
「そんなに時間はかかってないみたいだったけど、今日みたいに告白されるの、大変じゃない?」
「大変は大変だけど。結局、諦めてくれなくて何度も呼び出されたり、靴箱に手紙積まれるよりは、はっきり断った方がいいと思って」
「ふうん? だって断るわけでしょ。恨まれないの?」
「ああ、とにかく告白は言えば満足するみたいだぜ。振られれば、踏ん切りもつくらしいし」
「そう言われたの?」
「ああ、はっきり振っても感謝されるよ。振られるために告白してくるようなものなんだろうな、大抵」
「脈はなしって、皆わかってて、告白してくるんだ?」
聞いた有希に、水野は眉をしかめて有希を見た。
「当たり前だろ。俺、脈ありだと思われるような行動したことないぜ。こんなに毎日サッカーで忙しいってのに」
「彼女作る暇はないからって断ってるの?」
「ああ。事実だし」
「そっかー、そういえば角も立たないもんね」
「断りの言い回しも、勘違いされないような立ち回りも、上手くなったと自分でも思うよ。女子に優しくしたらいけないんだよな、たとえ相手が困ってても」
水野はため息まじりだ。
「それにしたって、律儀に毎回、告白受けつけなくても。ボランティア精神豊富ねぇ。感心するわ、毎日毎日」
「お前みたいな対応も、それなりに効果はあると思うけどな。女だったら、男に付きまとわれても迷惑だろうし」
「そうね、水野に告白してくる女の子たちとちがって、やつらは振られるために告白してくるわけじゃないからさ」
有希の横顔を見つめている様子の水野に、不審に思って有希は視線を上げた。
「なによ」
「男と付き合うのばかばかしい、って思ってるだろ、お前」
「……そうだけど、なんでそんな事?」
「たぶん、小島をよく知らない男は、わからないんだよ、小島がそういう人物だってこと。お前、その見た目な上に、猫かぶってたからさ」
「最近はかぶってないよ」
「最近は、な」
水野の浮かべた、なんだか妙に確信めいた笑みが気に入らなくて、有希は口をとがらせて言った。
「あたしは彼氏よか、一緒にサッカーする男友達が欲しかったもん。そっちの方が、あたしには貴重」
水野は軽く笑った。
「小島らしいよな。なんたってお前、アンブロ仮面だもんな」
「あーもーそれはやめてよ。一生ものの恥だよ、恥」
冗談は置いといて、と水野は言った。
「小島がいてくれるおかげで、部の体制もしっかりできてきたし、サッカー部もいい方向へ進んでると思う。マネージャーまでこなしてもらって、お前には感謝してるよ」
「あらそぉ、ありがと」
けっこう嬉しかったのだけれど、すげなく有希は答えた。
水野が彼女を作る気がないのは、本当なんだろう。
有希だって、彼氏を作る気はない。それは本心からで、嘘じゃない。
なのに、不思議だ。
どうしてだろう。お互いに、牽制し合っているように感じるのは。
気のせいだと、打ち消したいけれど。水野はお前の事はわかっているとでも言いたげな態度で、さらに実際、わかられている様子で。
有希が、水野が告白されに行くのを大変だなぁと思いつつ、面白くなく思っていることも事実なのだ。
帰り道で、水野と別れた後。
家路途中で両手の買い物袋を握りしめ、有希は声を上げた。
「あーもう、やめたやめた!」
不毛な考えはストップするに限る。
サッカーという大好きなものが有希にはあって。サッカー仲間も大切だ。
水野は、一緒に部活を作り上げるパートナーのようなもの。親友といってもいい。
そこに男とか女とかはたぶん、関係ない。
関係ないのだ。
結局、水野と有希の関係は、そのまま長く続いたのだけれど。
さすがに変わらないわけにはいかないと気付いたのは、二人ともほぼ同時。
二人をつないでいた部活動が引退になる、この時から一年後のことだった。
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2014/03/23
笛小説
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