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その頬をつついてみたい。
餌付けの作法
いい天気だから、外で食べるのも気持ちいいわね。
上條麻衣子は屋上にいた。女子サッカー部の打ち合わせで、みんなで座って、平和に昼食をとっていたのだが。
「ちょっと! 勝手に取らないでくださる!」
背後から伸びてきた手に、膝上のおにぎりを一つ奪われて、振り返って抗議の声を投げる。
にやりと笑んだ金髪の男が、手にした麻衣子のおにぎりを早くも頬張っていた。「ええやん、お嬢、いっつも一個残すんやし」
「今日も残すとは限らないでしょう! まだ食べ終わってないのに」
「ごちそうさん。旨かったで」
と、男は早々と完食し、指をなめる。
「もうっ! あっきれた、あなたときたら――なんでクラスの中で食べてる時だけじゃあきたらず、屋上でまでとってくのよ、私のおにぎり。わざわざ来たの?」
「育ち盛りやし。お嬢のおにぎりは、俺の昼飯ノルマに入っとんのやもん。無けりゃ腹へってまう」
「人のお弁当、あてにしないで下さる?」
「ええやん、お嬢いっつもくれるんやけぇ」
「あげてないわよ! あげたの最初の1、2回だけよ。あとはあなたが勝手に持っていくんでしょう!」
「そうやったっけ?」
「そうよ! 返しなさいよ、もう!」
「えー、もう食べてもうたし」
「じゃあ貴方のお弁当でいいわよ、出しなさいよ」
「もうとっくに食ったで」悪びれずに言った男の頬を麻衣子はつねった。
「佐藤成樹!」
「ふぁい」
「恥ずかしくないの貴方は!」
「やっれお嬢のおにきり旨いやん」
「美味しくても人のもの盗らないの!」
つねられた頬を撫でて彼が言う。
「せやかてお嬢、いっつもおにぎり一個余計に持ってきとるやんか、俺食うてもええようにやろ?」
「違います、もう! 佐藤のわからず屋!」
膨れて、麻衣子はそっぽを向いた。
周りの人間は、そんな2人のやり取りに、誰も割って入ったりしなかった。
この2人にはいつもの事だし、言うだけ野暮、でもあったので。
怒り冷めやらぬまま食事を再開する少女の横顔を見ながら、佐藤成樹は横になって肘枕をしつつ考えていた。
膨れっ面をした彼女の、その頬をつついてみたい。 つついたら、また顔を赤くして怒るのだろうけど。
その艶々とした髪を引っ張りたい。
自分の金髪も引っ張り返されるだろうけど。
――でもまぁ、いいか。
佐藤成樹は、少女の長い髪へと、そっと手を伸ばした。
かくして、彼らの日常は繰り返される。
その欲求を生む感情が何なのかには、なかなか気づかぬまま。
2014/04/08 笛小説 Trackback() Comment(0)
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