なんかとってもご無沙汰しております。
12月は繁忙月です。半端ないです。申し訳ありません。
更新したいのにno~
とりあえず、1本仕上げましたので
広い心でお読みください。
クリスマスもやりたかったのに(泣)
クリスマスも年末も年始も全く関係ないSSです。
[0回]
U-21代表合宿の最終日。メンバーそれぞれがシャワールームで汗を流し、適当に涼んでいるバックルームでのこと。
「なぁなぁ、そろそろいけると思わん?」
にやりと笑って言う金髪の友人に、物騒なデジャヴを感じ、水野はため息をついた。
今季も活躍を期待されているチームの要、水野竜也の記憶は、今から数年前の高校時代のはじめにさかのぼる。 恋も悪事も先手必勝U-17代表選抜合宿でのこと、機嫌よさそうに近づいてくるシゲに、水野は半ばうんざりして肩をすくめた。
シゲが京都の高校に進学してからも、会う機会は意外に多かった。シゲも水野もサッカーの選抜選手に選ばれ続けていたし、シゲが単身、東京に来ることもよくあったからだ。シゲが東京に来る主な目的は、『愛しの彼女』に会うためである。
「タツボンひどいやんか、人の顔見るなり、嫌そうな顔しよって」
話しかけてきたシゲを、水野は一瞥して言った。
「お前の話にいちいち付き合ってられるかよ…」
お付き合いの経過報告、というより自慢話をしたいらしい様子が、にやけたカオを見た瞬間にわかった。
シゲの思い人である上條は、中学時代の同級なので、選抜で来ているメンバーのなかで彼女を知っているのは水野ひとり。シゲとしては、自然と話し相手は水野となるのかもしれないが、正直、迷惑ではある。他人の色恋話を喜んで聞くタイプでは、水野はないのだから。
「そう冷たいこといわんと聞いてくれや。そろそろ、いけるかもしれへん」
うきうきと言ったシゲのセリフに、水野は聞き覚えがあった。
「そろそろいけるかもしれへん。最近、手ぇつないでも嫌がらんし」
「最近、ぎゅってしても嫌がらんし」
「最近、キスしても(以下略)」
と、中学時代から聞いていたからだ。
にやにや笑うシゲを振り切るように、勢いよくシャツを脱ぎながら水野は聞いた。
「そろそろいけるって、どの段階に? お前らもう付き合ってんだよな。ようやく落としたって、こないだ言ってただろ」
「そらぁ、行きつくとこまでにきまっとるやろ」
シゲの答えに、水野はげんなりとして肩を落とした。
「だから、いちいち俺に言うなって……」
----------------------
と、数年前の記憶がよみがえった水野は、眉をひそめ、にやにやと笑うシゲに言った。
「……おいシゲ、そろそろいけるって、どの段階にだよ?」
とっくに、行きつく所までいっているはずではなかったか。
この男がこの年になるまで、上條に手を出さないでいられる筈もないのだし。
「そらぁ、きまっとるやろ」
水野の疑問に、シゲはあっさりと答えを返した。
「お嬢もハタチやし、そろそろ嫁に来て貰えるんやないかな~思ぅて」
「嫁? ……お前正気か?」
「なんやタツボン、真顔で聞き返さんといてや。
正気やで。当たり前やんけ」
「だってなぁ……上條はまだ大学2年だろ」
「学生結婚したらええやん」
「東京の大学通ってるんだぞ」
「俺が東京に住んだらええやん。新幹線で2時間やもん。今かて、週に1回は通っとるんやから」
「だからって、早すぎないか。シゲ、お前まだ21歳だよな?」
「まだやなくて、もう21やって。何しても責任取れる歳やで? 俺ら」
「そりゃそうだけどな。……あ、ひょっとして、上條が妊娠したか?」
「まさか。俺ちゃんと気ぃ付けてんねんで。籍も入れんと子供作るほど適当やないで。100%ってことはあらへんから、出来てもうたら、そらぁ、しゃぁないけど」
「いや、俺が言いたいのはそういうんじゃない、だからだな、」
「タツボンはいっつも心配しすぎやねん。俺がお嬢に初めてキスした時やって、いきなりすぎるとか早すぎるとか雰囲気考えろとか、色ー々言うとったやろ。そういうの取り越し苦労って言うねんで。そんなんじゃ女は落とせんって」
「お前の押しが強すぎるんだよ」
水野は額に手をあて、ため息をついた。
「……プロポーズするのか?」
「おお。そのつもりや。指輪はやっぱ、ダイヤがええかな」
「好きにしろよそんなの。俺に聞くな。
ってか、何でいちいち俺に言ってくるんだよお前は」
「タツボンが俺の知り合いん中で一番、頭が固いからや」
「はあ?」
「ほれ、大事な決断する時には、自分と正反対の意見も一応聞いておかなあかんなーと思ぅてな。ありがとさん。参考になったわ」
「おい、ちょっと待てよシゲ。頭が固いってお前な、」
「結婚式には呼ぶさかい、ちゃんと出てやー」
一方的に話を打ち切り、シゲは水野に手を振る仕草をした。
シゲの上機嫌な背中を見送りながら、水野は呟く。
「……参考になるって言ってたけど……反論したり言いくるめたりするための、事前準備の参考だよな……忠告を聞くって意味じゃないよな、絶対……」
過去シゲに何度も聞かされた『そろそろいけるかもしれん……』の話は、水野が止めておけとアドバイスしたことで、より成功率を増したに違いない。数年来で初めて知る事実。水野はベンチに腰を下ろし、深くうなだれた。
きっと、上條はシゲに説得されてしまうだろうから、二人は結婚するわけだ。20と21歳にして。
自分と小島有希の今の状況――友達以上恋人未満の状態が5年ほど続いている――をどうしても比べてしまい、水野はその後、コーチに体調不良を疑われるぐらいに落ち込み顔をして、家路についたのであった。
~END~PR
2009/12/29
笛小説
Trackback()