そろそろお正月休みも、終わりに近づいてきましたね。
今年は雪が少ないといいな……
それではどうぞ。

[0回]
謎解きはディナーの後で 3
突然目の前に現れた、ジーンズに上半身裸という格好の藤村成樹に、麻衣子は混乱して聞いた。
そう、藤村成樹。中学の時からの知り合い。
彼は普段、京都に住んでいて、サッカーの試合や、何かの用事がある時だけ東京に来ている。
中学時代から細々と連絡を取り合っていて、東京で試合や練習、仕事をする機会がある時に、麻衣子と偶に食事をしたりするようになった。
最近では、外食ばかりで飽きているからと、20歳になって独り暮らしをすることになった麻衣子の部屋で手料理を食べていくこともあって……
そう。関係を表現するなら、『一緒にご飯を食べる友達』。
でも今日、来るなんて事は聞いていなかったし、鍵を渡してもいないのに、なぜここにいるのだろう。
混乱している麻衣子に、
「昨日の事、覚えとらん?」
彼が聞いた。
麻衣子は、覚えていないと頷いた。
「全然? ホンマに? えらい酔っぱらって、知らん男に抱えられてアパート帰ってきたことも?」
ほとんど覚えていない麻衣子は、また頷いた。
「じゃぁ……昨日の夜のことも?」
「昨日の、よる?」
麻衣子は混乱したまま、上半身裸で、両肩にタオルを掛け、髪を湿らせたままの藤村成樹を見た。
ベッドの傍まで近づいてきた藤村は、珍しく難しい表情をしている。
「全然……記憶ないわ。何かあったの?」
「何かって、なぁ」
飛沫の残る前髪を困ったようにかき上げ、藤村は麻衣子のベッドにため息をつきながら腰かけた。
「お嬢、身体辛くない?」
「え? 頭は痛いけど……」
身体、と言われて麻衣子は自分の身体を見た。
麻衣子の上半身は、だぶだぶのジャージを着ていた。見覚えはないから、自分のものではない。大きさからいって多分藤村のだろう。
下はスカートのままで、皺になるからクリーニングだわ、なんて変なことを思っていたけれど。
「藤村、どうしてここに?」
「お嬢、身体は? どっか痛い所ないか?」
「どこも痛くないわ……どうしてよ?」
「お嬢に今まで言うとらんかってんけど、俺、お嬢のこと好きやねん」
「好き? 好きって何よ?」
ほとんど唯一の男友達と思っていた藤村成樹に言われても、麻衣子には寝耳に水だ。ますます混乱する。
「あの、どういう意味? 質問に答えてないし、好きってそれ、本気で言ってるの? 冗談?」
「冗談やない。ただの友達やったら、飯食ぅために一人暮らしの女性宅にしょっちゅうお邪魔するなんてずうずうしい事せんし、東京に来るたんびに会いに来たりせん。お嬢が好きで、お嬢に会いとうて来とるんや。お嬢の恋人になりとうてしとったことや。ずっと気付かんかった?」
「何なの、どうしちゃったの、藤村」
「せやから、お嬢が酔っぱらって妙な男に送られて帰ってくるからこないなっとんのや。あいつ誰?」
「知らないわよ、昨日初めて会った人よ、名前も覚えてないわ」
「二度と会わんようにしとき。ええな。お嬢は酒弱いみたいやから、外で飲むときは2~3杯で止めとき」
「そんなことは今いいから」
「いや、良くない。危ないねんて」
真剣な彼の表情に、麻衣子は黙った。
「すまんな。俺、もう時間あらへんねん。いっぺん出るわ」
そう言って、藤村は麻衣子の来ているジャージに触れた。
「あ、はい、今脱ぐから待ってて!」
彼は仕事があるのだと、ようやく頭が回りだした麻衣子は、立ちあがって自分のチェストから上着を取り出した。
自分が彼のジャージを着せられていた不思議に思い至ったのは、バツの悪そうな表情をした彼を見送ってからだった。
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2014/01/03
笛小説
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