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占いは信じない主義2
7月8日は、麻衣子にとって、他の日よりも、ほんの少しだけ、特別な日だった。
その日にあわせて、バースデーカードを送るのが、毎年の習慣だったから。
特に深い意味はないのだから、と毎年言い訳をしながら投函するバースデーカード。
メッセージも、誕生日おめでとう、以外には入れない。
その相手、藤村成樹、は、中学時代の同級生だ。
それ以外に、説明する言葉を麻衣子は持たない。
相手からも、8月末の麻衣子の誕生日には、同じくバースデーカードが届く。
そんな、年に一度、夏のやりとりを繰り返す相手。
彼はこれまでに3度、住所が変わったけれど。彼の手元まで、どうにか届いているのだろう。新しい住所で、麻衣子の誕生日に届くバースデーカード。
単に、送られたから礼儀として送り返してくれているのか。
他に意味があるのか。
麻衣子宛てにシンプルなバースデーカードが届くたび、不思議に思う。
今年の夏こそ、返信はこないかもしれない。
そう思って、毎年投函しているのに。
カードが今年来なければ、ふっ切れる、そう思って投函しているのに。
返ってこなかった夏は、今まで無いのだった。
麻衣子の誕生日、8月29日。
彼の返信を待っているつもりはないけれど。
いつまでも彼を引きずっていても、仕方がないことは分かっているけれど。
こんな風に、連れてこられるとは思っていなかった。
「ねぇ、やっぱり私、やめておくわ」
麻衣子が何度目かで言うと、
「ここまで来たんだから、それは無いでしょ」
と友人は答える。
友人同士で誕生祝いするから、と麻衣子はすっかり騙されて連れ出された。
「だって、合コンだなんて言ってなかったじゃない」
「だって言ったらイヤって言うでしょ? 占いだって運命の出会いって書いてたんだから、試しに参加してみたって、いいでしょ?」
「だって、友達どうしで集まるって言ってたじゃない」
「ほら、もう店も見えてきたし。あきらめて、麻衣子。タダでご飯が食べられると思えばいいもんよ~」
「食べなくてもいいですわよ」
目の前には、大学生だけではちょっと入りづらい、料理の値段の見当がつかないようなお店が見えてきた。
友人はためらいもせずに受付に進む。
……こういうお店で合コンって、するものなの……?
麻衣子は内心考えつつ、彼女の背中に仕方なく付いて店内を進む。
「……あれ、お嬢?」
ふと、そんな声が背後にかかって、麻衣子は振り向いた。
「……佐藤?」
麻衣子も、懐かしい呼び名を呼んだ。
まさか、数年ぶりに。
こんな偶然に会うなんて。
彼はTVにも映る人だから、見間違えではない、のだろう。
藤村成樹が、そこに居た。
つづく
2011/08/08 笛小説 Trackback() Comment(0)
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