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占いは信じない主義3
「偶然やん。懐かしいなぁ。何年ぶり?」
彼がそう言った。
「あの、え? 佐藤、なんでここに?」
麻衣子は焦って、見当違いの質問をする。
「そう呼ばれんのも新鮮やなぁ。俺、今はもう、佐藤やないねん。仕事上がりで、飯に連れてきてもろたんよ。お嬢はどうしたん? 友達と食事? リッチやなぁ」
「違うわよ、別に……」
麻衣子は隣の友人を見た。
友人は、びっくりした顔で、麻衣子の腕をつついている。
「麻衣子、知り合いなの?」
「ええ、中学時代の同級生」
彼は、いつもの事、のような顔で、「どうもはじめまして、藤村ですー」と、軽い挨拶をする。
彼の連れである、スーツを着た35歳くらいの男性が、彼に何事か耳打ちをするために、彼の注意を引いている。
麻衣子はその間、友人に急かされてこそこそ話をした。
「ちょっと、麻衣子、あんな有名人と知り合いなんて聞いてないよ」
「だって、ずっと会っていないし、私だって驚いてるんですのよ」
「彼に気があるなら、合コンはいいから、行ってきなさいよ、こんなチャンスないわよ」
「だって、そんな、人数だってあるでしょ」
「そんなの気にしてないで! ほら、これがきっと、運命の出会いだってば」
「でもー」
と、ここで、彼側の会話が終わった。友人が素早く振り返って言った。
「あの、もうお食事されたんですか?」
「おお、食べてもうたで」
「そうなんですか、残念ー」
「君らは、合コンやろ?」
「えー、なんで分かっちゃうんですか?」
「あっちにそれっぽい集団居ったし。君の格好も気合入っとるし」
ぽんぽん交わされる会話に、麻衣子はついていけない。
「ねぇ、時間は大丈夫なの?」
麻衣子はつい、聞いてしまった。
友人がすごい形相で振り返り、麻衣子、黙ってて! のような視線を投げられた。
藤村成樹と、目が合った。
今日は麻衣子の誕生日。
もしかしたら、今日だって、カードが届いているのかもしれない。
彼は、麻衣子の誕生日を覚えているのかもしれない。
届けられているカードの意味をずっと知りたかったのに。
一言、聞けばいいのに。
少しの沈黙。
「青春やなぁ。ええ出会いがあるとええなぁ。ごゆっくり」
と、藤村成樹が言う。
「ええ、そうね……」
麻衣子は思わず目を逸らしながら、そう答えた。
それじゃぁ、なんて軽い挨拶を交わし。
彼らは店を出る雰囲気になった。
友人に目線で責められたけれど、麻衣子には何もできない。ただ首を振った。
「行こっか」
の言葉にうなずき、麻衣子と友人は彼らに背を向けて店を奥へ進む。
予約されていた個室へ着く直前、肩をたたかれ、振り返ると、彼が居た。
麻衣子の友人に向けて、内緒やで、とジェスチャーをし。
麻衣子の手に、名刺が差し出された。
彼の名前が書かれた名刺。裏返して見る。
『終わったら連絡下さい』
そんな字が書かれていた。
にやけて、彼に同じく内緒のジェスチャーを返す友人に、麻衣子はあわててカバンにそれを隠し、なにやら自身ありげな彼に一瞥をくれ、初めての合コンへと合流した。
合コン中、相手に失礼ではあるけれど、はっきり言って、うわの空だった。
つづく
2011/08/15 笛小説 Trackback() Comment(0)
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